『四つの最後の歌』(R・シュトラウス作曲)の詩から

 この歌曲の素晴らしさはリヒャルト・シュトラウスが最後を意識しての作品と思われる内容でヘルマン・ヘッセの詩集からインスピレーションを得て3曲が完成したことです。

その3曲のヘッセの美しい詩を記します。

第1曲:春             (西野茂雄氏訳)

ほの暗い洞穴の中で
私は長い間夢をみていた、
お前の樹々のことを、青い空のことを、
お前の芳香のことを、小鳥の歌のことを。

いま、お前はヴェールをぬいで、
きらめくようなよそおいをつくし、
光を溢れこぼれさせながら、
奇跡のように、私の前にいる。

お前は再び私に気づき、
お前はやさしく私をいざなう。
お前が目の前にいることのしあわせが
私の体中をおののかせる!

1.Frühling

In dämmrigen Grüften
träumte ich lang
Von deinen Bäumen und blauen Lüften,
Von deinem Duft und Vogelsang.

Nun liegst du erschlossen
In Gleiß und Zier
Von Licht übergossen
Wie ein Wunder vor mir.

Du kennest mich wieder,
Du lockest mich zart,
Es zitterst durch all meine Glieder
Deine selige Gegenwart! (ヘルマン・ヘッセ詩)


第2曲:9月

花園は悲しみに沈んでいる、
雨がつめたく花に降りそそぐ。
夏が、その終わりに向かって
音もなく身をふるわせている。

高いアカシアの枝からひとひら、またひとひら
葉が、金色のしずくとなって散りしく。
夏はいぶかしそうにもの憂い微笑を洩らす、
ほろびてゆく花園の夢の中で。

しばらくはなお、ばらのかたわらに
いこいを待ちのぞみながら夏はとどまる。
やがてゆっくりと、その(大きな)
疲れたまなこを夏は閉じる。

Ⅱ:September

Der Garten trauert,
Kühl sinkt in die Blumen der Regen.
Der Sommer schauert
Still seinem Ende entgegen.

Golden tropft Blatt um Blatt
Nieder vom hohen Akazienbaum.
Sommer lächelt erstaunt und matt
in den sterbenden Gartentraum.

Lange noch bei den Rosen
Bleibt er stehn, sehnt sich nach Ruh.
Langsam tut er die(grossen),
Müdgeword' nen Augen zu.             (Hermann Hesse詩)


第3曲:眠りにつこうとして

一日の営みに私は疲れ果てた、
私の切なる願いを、星のきらめく夜が
やさしく受け入れて欲しいものだ、
疲れた子供を抱きとるように。

手よ、一切の行為をやめるがよい、
額よ、一切の思考を忘れるがよい、
いま、私の感覚のすべては
ひたすら眠りに沈みたがっている。

そして、魂は誰のも見張られることなく
自由な翼を張って漂おうとしている。
夜の魔術的な世界の中で、
深く、千倍にも生きるために。

Ⅲ.Beim Schlafengehen

Nun der Tag mich müd gemacht,
Soll mein sehnliches Verlangen
Freundlich die gestirnte Nacht
Wie ein müdes Kind empfangen.

Hände laßt von allem Tun,
Stirn vergiß du alles Denken,
Alle meine Sinne nun
Wollen sich in Schlummer senken.

Und die Seele unbewacht
Will in freien Flügeeln schweben,
Um im Zauberkreis der Nacht
Tief und tausendfach zu leben.              (Hermann Hesse詩)

4曲目の「夕映えの中で」はアイヒェンドルフ(Eichendorf)という詩人の歌詞です。
対訳だけ記します。

第4曲:夕映えの中で

苦しみにつけ、よろこびにつけ、
ぼくらは手をとりあって歩んできた。
さすらいの足をとどめて、いまぼくら(二人)は
静かな田園を見晴らす丘でやすらう。

ぼくらのまわりに、谷々がおちこみ、
空ははや暮れかかっている、
二羽のひばりだけが、昼の名残を追って
まだ夕もやの中にのぼったままだ。
こっちへおいで、ひばりがさえずるにまかせてー
じきにもう眠りの時間がくる、
この二人きりのさびしさの中で
ぼくらははぐれないようにしよう。

おお、このひろびろとした静かな平和!
こんなに深々と夕映えの中で染まって。
旅の疲れが重くぼくらにのしかかっているー
ひょっとしたら、これが死だろうか?

こうして日本語を記していますと、やはりドイツ語の詩も記したく・・・

Ⅳ.Im Abendrot

Wir sind durch Not und Freude
Gegangen Hand in Hand.
Vom Wandern ruhen wir (beide)
Nun überm stillen Land.

Rings sich die Täler neigen,
Es dunkelt schon die Luft,
Zwei Lerchen nur noch steigen
Nachträumend in den Duft.
Tritt her, und laß sie schwirren,
Bald ist es Schlafenszeit,
Dass wir uns nicht verirren
in dieser Einsamkeit.

O weiter, stiller Friede!
So tief im Abendrot.
Wie sind wir wandermüdeー
Ist dies etwa der Tod?       (Joseph von Eichendorf詩)

ひばりの鳴き声のところなどオーケストラの木管のトリルの美しいこと!

とうとう4曲ぜんぶ記してしまいました。

アッカーマン指揮の『春』の光を溢れこぼさせながら・・・の美しさはシュワルツコップの若さと共に輝いています。

4曲目の『夕映えの中で』はやはりジョ-ジ・セル指揮にはかないません。最後に消えていくような静寂の美は何も言えないくらい・・・。

美しいです。










 
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Commented by k_hankichi at 2015-02-13 07:14
ああ~、昨日、出張帰りの機中オーディオ番組でネトレプコがこれを歌うものを聴いていました。元気良すぎかな、という歌声でした。
Commented by およう at 2015-02-13 17:50 x
はんきちさま ご出張でいらしたのですね^^ ネトレプコ、ロシアの歌い手さん。最近の方のようでどのように歌っていらっしゃるのか聴いてみたいです。
Commented by k_hankichi at 2015-02-14 08:54
はい。上海までとんぼ返りしてきました。最近の機内音楽番組は充実してきて嬉しい限りです。
by madamegrimm | 2015-02-11 11:50 | クラシックはお好き? | Comments(3)

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