辻邦生への印象から想い

 真夏の太陽を感じないどんよりした雨が降り続いています。

お盆休み、人々の夏休みと敗戦記念日を境にした連休ニュースにマスメディアは右往左往している中、ブログ友のご紹介で思い出しました『手紙、栞を添えて』(ちくま文庫)を読む。

著者は辻邦生・水村美苗お二人の往復書簡です。1990年代に新聞社の依頼から始まった2年程の連載物です。

昔、何時でしたでしょうか、辻邦生のやはりZeitungの連載小説を丁度その頃配達してもらっていた新聞で、その時代の社会現象と彼が執筆している内容が今思えばアンサンブルのようにハモっていて不思議な印象を受けました。

辻邦生夫妻と云えば森有正を師と仰ぎヨーロッパ時代は常に夫妻で行動を取られ私から見ると別世界の人間として映り、新しい生き方を模索している男女の姿にみえました。

森有正の苦悩の生き様は明治の文明開化から繋がる比較文学者として全集を読み通し、深く共鳴し自分の生き様にもかなりの影響を受けた者としては辻邦生の存在は少し違和感を持ったものです。

しかし、この度この本から彼を顧みることが出来、そして彼の生い立ちをあらためて検索することが出来、水村美苗さんというパイオニア的帰国子女ご経験の方との往復書簡は素直な自然体の辻邦生氏を見ることができたのです。

そして最後のエピローグーー風のトンネルで浅間山麓から自然の木々の間から高貴な浮遊感を経験なさり、この2年後急逝なさっているのです。

往復書簡の中には世界中の沢山のお二人が読まれた本の紹介がしてあります。

本を読む幸せがひしひしと伝わってまいります。私も次はスピノザの『エチカ』を開いてみたいと想っています。










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Commented by maru33340 at 2017-08-17 06:05
おようさん
8月に入り毎日雨模様の日が続いていますが体調はいかがでしょうか。
さて二人の往復書簡お読みになったのですね。
僕もこの本から刺激を受けこの夏休みにまたトーマス・マンや幸田文の小説を読み返したりしました。
少し忘れかけていた本を読むことの幸福を久しぶりに思い出しました。
昨夜は珍しく夜通し小説を読んでいて、ふと気がつくと明け方窓外から秋の虫の鳴き声が聞こえてきました。
夏ももう終わるのですね。
それではまた。
maru
Commented by Oyo- at 2017-08-17 09:59 x
maruさま
少し忘れかけていた本を読む幸せを私も今味わおうとしております。
そうですね、この本から幸田文の『父・こんなこと』の一節が出てきますが彼女の情熱をあらためて知りました。
家の壁に「縁は感動なり」という色紙が昔から掛かっているのです^^
太陽の光を遮る重い雲が巷を蔽っています。
そちらこそ、お身体お大切に。  およう
Commented by k_hankichi at 2017-08-17 14:17
おようさん
雨が毎日降る八月ですが、それが止むとやはり夏の蒸し暑さが堪える日々ですね。
辻邦生の往復書簡、素晴らしかったですね。

手紙というものは、幾日か経てからようやっと相手に届き、そして読まれていくことがわかっているから、事前によく中身を考え、詠まれた際の相手の気持ちをようくに想像しながら書く。そしてそれはその通りに、静かにしかし確かに沁み入る。

最近は、ごく近しい友人であっても、そうやって気持ちをやり取りすることはめっぽう少なくなってきましたが、もしかすると、私たちは日常生活だからこそ、このような気配りと想像(敢えて「忖度」という言葉は使いません、時節柄)を施して、やり取りをしなければならないのかもしれませんね。

残暑はまたぶり返してくるでしょう。体調を保たれ過ごされますように。

それではまた。  はんきち
Commented by Oyo- at 2017-08-17 20:52 x
はんきちさま 
往復書簡からの手紙のやりとりが幸福な精神との結びつきの大切さを教えてくれていますね。
貴殿も理数系でいらっしゃいますが『嵐が丘』からスピノザに移って行く著作『エチカ』を語る中で、哲学というより幾何学のような、公理と証明で全存在の本質を解明していくスピノザは、真理に近づくのが喜びだったからです。と辻邦生は記しています。
精神の香気を味わいたい・・・なんて素敵な往復書簡でしょう。
良い夏休みをお過ごしのようで、英気を養われあらたなお仕事へと繋がっていきますことを祈ります。
お元気で。  およう
by madamegrimm | 2017-08-16 15:14 | 人間 | Comments(4)

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