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第63話 日本語版 <3枚の鳥の羽>

 グリム童話 第63話 <Die drei Federn> 「3枚の鳥の羽」

 昔 ひとりの王さまがいました。王さまには3人の息子がありました。
そのうちの2人の息子は抜け目なくりこうでしたが3番目の息子はあまり口をきかず少したりなかったので、‘抜け作’と呼ばれていました。
王さまは年をとり弱っていつ死ぬかもしれないと思うようになりましたが、息子たちのだれに国をつがせたらよいか、わかりませんでした。
 そこで息子たちに「旅に出なさい、一番立派なじゅうたんを持ってきたものを、わたしの死んだあと、王さまにする」といいました。
3人のあいだにけんかがおきないように、王さまは三人をお城の前に連れていき、3枚の羽を空中に吹き飛ばし、「羽の飛ぶ方にでかけるのだよ」といいました。
一枚の羽は東に飛び、二枚目は西に飛びましたが、三枚目はまっすぐ飛び、いくらもいかないですぐ地面に落ちました。
そこでひとりは右へ、もひとりは左へいきました。
そして三枚目の羽の落ちたところにじっとしていなければならない抜け作を二人の兄はあざ笑いました。
 
抜け作はこしをおろして、しょんぼりしていました。
ふと気が付くと、羽のそばに、はねあげ戸がありました。
そのふたをあげると、階段があったので降りていきました。
するとまた別の戸がありました。ノックすると、中で呼ぶ声がしました。
「緑の小さいむすめよ、 しわくちゃな足よ、 しわくちゃな足の犬ころよ、 あっちこっちによちよちして、 早くお見せ、外にいるのはだれか。」

戸があくと、中に大きな太ったひきがえるがすわっていて、そのまわりに小さいひきがえるがたくさんいました。
太ったひきがえるは、なんの用か、とたずねました。
抜け作は「一番きれいなりっぱなじゅうたんがほしい」と答えました。
すると、太ったひきがえるは若いのを呼んでいいました。

「緑の小さい娘よ、しわくちゃな足よ、 しわくちゃな足の犬ころよ、 あっちこっちして、 大きなはこを持ってこい。」
若いひきがえるははこを持ってきました。
太ったひきがえるはそれをあけて、抜け作に一枚のじゅうたんをやりました。
そのきれいでりっぱなこと!地面の上の世界では織られたことなんかないくらいでした。
そこで抜け作はお礼をいって、また上にあがりました。

ふたりの兄は、末の弟はあんなにおばかさんだからなにもみつからないで、何も持ってこられないだろう、と思っていました。
「大骨おってさがすことなんかないさ」と、ふたりはいい、いきあたりばったり出会った羊飼いの女から、ごわごわのラシャの布をはぎとって、王さまのところへ持って帰りました。
 同じころ、抜け作も帰ってきて、美しいじゅうたんを出しました。
王さまはそれを見ると、おどろいて、「正しく事をはこばなければならないとすれば、王国は末っ子のものだ」といいました。
 しかし、ふたりの兄は父をやかましくせめたて、何事にも分別の欠けている抜け作は王さまにはなれない、といい、新しい条件を出してほしい、とたのみました。
そこで父は「わたしに一番美しい指輪を持ってきたものに、国を受け継がせる」といい、三人兄弟を外に連れ出し、空中に三枚の羽を吹き飛ばしました。
その方向にしたがって三人はいくはずでした。
上のふたりはまた東と西へ出かけました。
抜け作のためには羽はまっすぐ飛んで、地面の戸のそばに落ちました。
そこでかれはまた太ったひきがえるのところに降りていき、一番美しい指輪がいるのだ、といいました。
ひきがえるはすぐに大きなはこを持ってこさせ、その中から一つの指輪をとって彼に与えました。
それは宝石の光りにかがやいており、世界中のどの金細工師も作ることができなかったほどきれいでした。

ふたりの兄は、金の指輪をさがそうとした抜け作をあざ笑い、さっぱり骨をおらないで、古い車の輪からくぎをぬいて、その輪を王さまのところに持っていきました。
しかし、抜け作が金の指輪をさしだすと、父はまた「王国はこの子のものだ」といいました。
 それでもふたりの兄は王さまをこまらせつづけたので、とうとう王さまは三度目の条件を出し、一番美しいおよめさんを連れて帰ったものに王国を与える、といいわたしました。
 王さまは三つの羽をまた空中に吹き飛ばしました。羽はこれまでのように飛びました。
そこで抜け作はさっそく太ったひきがえるのところに降りていき、「一番美しいおよめさんを連れて帰らなければならない」といいました。
「おやおや、一番美しいおよめさんですって!」と、ひきがえるは答えました。
「それはすぐ手元にはいませんが、手にいれてあげましょう」

ひきがえるは黄色いかぶらをえぐりぬいたのに、六匹のハツカネズミを馬のようにくっつけて抜け作にやりました。抜け作はすっかりしょげて、「これでどうしたらいいのさ?」といいました。
 ひきがえるは「わたしの小さなひきがえるを一匹だけこの中に乗せなさい」と答えました。
そこでそこらから一ぴきを手当たりしだいにつかまえて、黄色い馬車に乗せました。ところが、それが中に腰掛けるやいなや、そのひきがえるが何とも言えない美しいお嬢さんになり、かぶらが馬車になり、六匹のハツカネズミが馬になりました。
そこで抜け作は彼女にキスをし、馬をかって、王さまのところに連れてきました。

兄たちはあとからきました。
ふたりは美しいおよめさんをさがすのに、いっこうに骨おらず、いきあたりばったりのお百姓の女をふたり連れてきました。
王さまはそれを見ると、「わたしの死んだあと、国は、末の子のものだ」といいました。
 しかし二人の兄はまたもや「抜け作が王さまになるなんて、承知できない」とわめいて、王さまのみみを聞こえなくしてしまいました。
そして、広間のまん中につるした輪をくぐりぬけることのできた女の夫が、一番えらいということにしてほしい、とせがみました。
兄たちは(お百姓の女ならそれができる。それだけのたくましさがある。それにひきかえ、きゃしゃなお嬢さんは飛びそこなって死んでしまう)と考えました。
年とった王さまはそれを承知しました。

ふたりのお百姓の女が飛びました。
確かに飛んで輪をくぐり抜けましたが、あまりぶきっちょだったので、ひっくりかえって、ぶかっこうなうでと足をポッキリ折ってしまいました。
その次に、抜け作の連れてきた美しいお嬢さんが飛びました。
しかのように軽々と飛びました。
それでどんな反対もおしまいになりました。
 こうして彼は王冠をさずかり、長いあいだ賢く国をおさめました。おわり
by madamegrimm | 2013-03-22 13:30 | グリム童話ってすごい | Comments(0)

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